完全予約制
諦めかけていた膝痛・腰痛

60代 女性】 【主訴】 膝痛 【既往歴】 第五腰椎すべり症
【来院に至った経緯】 腰に最初の違和感を覚えたのは、多忙な看護師としてキャリアをスタートさせた20年ほど前に遡る。日々、患者様をベッドから車椅子へ移乗させる介助や、長時間に及ぶ中腰姿勢の連続により、鋭い痛みが腰を走るようになった。 整形外科での診断は「第五腰椎すべり症」。
リハビリや湿布による処置を繰り返したが改善の兆しは見えず、「この痛みとは生涯付き合うしかない」と半ば諦めの境地で日々を過ごしていた。 幸い、当時は仕事を休むほどではなかったため、近所の整骨院で鍼治療を受け、症状を誤魔化しながら業務を遂行していた。 変化が訪れたのは3年ほど前、職場のラジオ体操中に膝へ違和感を覚えたことだ。
しかし、日常生活に支障がなかったため、特に対策をせず放置してしまった。 その後、職場の先輩が膝痛で受診し「軟骨が消失している」と告げられ、ヒアルロン酸注射を打つ姿を見て、自身の膝にも強い不安を抱き始めた。 今年に入り、病状は急変した。
短期間に深刻なぎっくり腰を3回も再発し、結果として仕事を欠勤せざるを得ない状況が続いた。 長年の懸念だった左膝も、歩き出しの一歩目から激痛が走るようになり、施設内の移動や階段の上り下りといった看護業務に深刻な支障をきたした。
整形外科のレントゲン検査では「軟骨が磨り減り、ほぼ消失した状態」と診断。医師からは鎮痛剤を処方され、改善なき場合は人工関節置換術になると、膝模型を前に事務的に説明された。
将来への強い不安と絶望に襲われた瞬間だった。 医療機関での改善が見込めない現状に加え、医師の冷ややかな対応にショックと憤りを感じ、「このままでは看護師を続けられない。先輩と同じ道を辿るのか」と焦燥感に駆られた。 藁にもすがる思いでネット検索を行い、「膝の痛み 根本治療」「すべり症 改善」等のワードから、駅近の立地で深刻な悩みの解決実績が多い当院を見つけ、一縷の望みを託して来院された。
【初診の状態】
【所見】 頚部 バレリュー(-)、マイグネ(-) 腰部 SLR(-,-)、ケンプテスト(-,-)
【体表温度検査】 右仙腸関節 L5 C1
【視診】 左耳介上方 右肩上方 右短下肢
【静的触診】 正中仙骨陵に浮腫感 腰部脊柱起立筋の過緊張 右上後腸骨棘上端に窪んだ浮腫
【動的触診】 FIX:右仙腸関節 S3 L5 C1
【リスティング】 R ili PI P(S3)L5 PR ASLP
【来院日】 R7.4/22, 5/7, 15, 23, 30 6/5, 11, 19, 27 7/3, 9, 17, 29 8/4, 22, 28 9/5, 8, 16, 26
【経過と内容】 初診時の体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎にサブラクセーション(神経伝達妨害)特有の温度差が顕著であった。 仙腸関節の圧痛に加え、右側の可動域制限と脊柱起立筋の顕著な緊張を確認。これらの所見に基づき、初期集中期として週1回のケアを開始した。
6週目(6回目のケア):膝の痛みは残るものの、強度は確実に低下。階段昇降や起立時の苦痛が以前より緩和された。左腰部の重だるさも気になる頻度が減少。
9週目(9回目のケア):左膝の激痛は大幅に引いたが、慎重に歩行を確認している段階。腰痛は消失。仙腸関節周辺の浮腫と筋緊張の緩和を確認。
14週目(14回目のケア):鹿児島旅行を敢行。歩行や階段移動でも膝の痛みが出現せず、心ゆくまで旅行を堪能できた。帰宅後も痛みの再発がなく、大変喜ばれていた。 現在は、仕事や趣味を継続するための健康維持として、定期的なカイロプラクティックケアを継続されている。
【考察】 今回の症例は、徒手検査で靭帯損傷等は否定されたものの、レントゲンで確認された「軟骨の消失」という重度の変形性膝関節症による摩擦や炎症が痛みの要因であったことは間違いない。 しかし、これほど不可逆的な変形を招いた背景には、カイロプラクティックにおける骨盤部のサブラクセーション(神経伝達異常)が深く関わっている。
骨盤機能の停滞は、仙腸関節の荷重分散能力を著しく低下させる。本例では右仙腸関節の神経機能異常を補うため、対側の関節に過剰な運動が生じ、結果として左股関節および膝関節へ過度な物理負荷が集中したと考えられる。
また、患者様が長年悩まれていた腰痛も、この神経機能の乱れによる椎間関節や筋肉の慢性的な過緊張の結果であり、膝と腰の痛みは同一の根源(骨盤サブラクセーション)から派生していたと推測される。
腰椎・骨盤部から派生する神経は膝関節の制御も担っており、土台部分での長期的な神経伝達の乱れが、組織の回復力を低下させていたことも要因の一つだろう。 構造的な軟骨摩耗は残存するものの、アジャストメントにより骨盤の安定性が向上し、膝へのストレスが激減した。神経伝達の正常化により痛みの信号が鎮静したことで、「軟骨がなくても痛みなく動ける状態」を実現できたのだ。
膝以外の腰痛も同時にケアし、上部頚椎と骨盤の反応を優先的にアプローチしたことが、重度変形からの段階的な回復に繋がった。患者様の本来持つ「治る力」を最大限に引き出せた、非常に意義深い症例である。



